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草紅葉の海で、なぜかパエリア
[秣岳―1424m(東成瀬村) 2012年10月7日(日)]
 朝6時半、家の前まで「山の学校」F校長が迎えに来てくれた。総員4名、男女半々のメンバーで出発。このくらいの早起きと小人数がハイキングにはちょうどいい。そう今日はハイキング程度の楽な山歩きだ。登山口のある須川湖の管理棟でゆっくりコーヒーを飲んでから登りはじめた。コーヒーはF校長の友人の管理者がサービスしてくれたもの。須川湖のキャンプ場は満杯で管理者も大忙しのようだ。犬を連れた中高年の夫妻や、キャンピングカーでの車上ホームレス風のお年寄りも最近やけに目立つ。キャンピングカーで全国を回っている中高年は、夢を実現して、楽しいのか、いつも疑問に思っている。
 標高1030mの須川湖登山口から登りはじめると、すぐにやぶの下に真っ白なヒラタケを発見。キノコに興味がないので皆を残し黙々と一人先頭で歩き続ける。
 栗駒山にはずっと雲がかかっている。暑くも寒くもなく、汗っかきには最高の天候だ。約一時間半で頂上へ。麓はまったくといっていいほど紅葉の兆候がなく心配だったが、標高1200m付近から木々は色づきはじめ、頂上から栗駒側の紅葉は6割ほど。このぐらいの「ほどほどの紅葉」が好きだ。

紅葉はまだ6分

これが秣岳
 風の強い山頂を避け、天満尾根側に下り、見事なベージュに色づいた草紅葉の海のなかの木道に腰掛け、昼飯。栗駒側から縦走してくる登山客がひっきりなしに横切るが、かまっていられない。秣は風が強い山なのに風を防いで休めるような場所が皆無なのだ。ここにきて車にコンビニで買ったおにぎりを忘れてきたことに気がついた。まあ山ではいつも食欲がないので、予備の行動食でごまかそうと思ったのだが、F校長がお弁当を分けてくれた。その弁当の中身は何とスペイン料理・パエリア。紅葉の山と真っ黄色のサフラン香るパエリアはよく合って味も申し分なし。しかし山飯にパエリアというのは意外だった。
 F校長いわく。新米の季節なので、古米でパエリアをつくった、とのこと。このへんは農業の国・秋田ネイティブならではの「おしゃれな選択」である。
 下山は45分、須川湖に到着。温泉は栗駒山荘を予定していたのだが、秣の山頂から山荘の駐車場が車で満杯なのが分かったため、皆瀬村の有名な秘湯・阿部旅館に変更。電気もない秘湯なので一番重要なシャワーもない。こちらは汗を流したいだけで、キノコ同様、有名な秘湯にもほとんど興味ない。真っ暗な脱衣所で、カメムシがウジャウジャの鄙びた温泉で、内心がっくりしながら湯を浴びた。
 お湯の後は皆瀬村のお蕎麦屋さんへ。手打ち100%の蕎麦だというが、できてくるまで30分以上待たされた。注文を受けてから打ちはじめているのかしら。待ちくたびれた苛立ちだけが身体に残り、いまになっても蕎麦の味はまったく思いだせない。

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