No.106
雨天・街道・空中回転
[貝吹岳(991m・岩手県岩手郡雫石町――2015年5月24日)]
 前夜からの雨だが、この程度なら問題なく決行である。
 仙岩峠の真上にある貝吹岳は標高が1000b弱ある。昔から岩手と秋田をつなぐ街道であり旧国道のあった場所。今日は秋田大学の学生で「道路オタク」M君も特別参加。M君は毎週うちにアルバイトに来ている学生だ。
 レインウエアーに長靴での登山になった。雨の山もまた趣きがある。国見温泉を過ぎ旧国道46号の車止めゲートからスタート。もうこの時点で駐車場は満杯で、歩き出しても秋田市駅前広小路並の人出に驚いてしまった。タケノコ採りシーズンなのだ。この辺は田沢湖などの観光施設がいっぱいある。商売になるのだろう。それにしても雨の中ご苦労なことだ。山の中をひっきりなしに自転車が往来し、バイクが走り回り、旅行用のキャリーバック持参の人までいる。ここは本当に山中なのか。ほとんど繁華街とかわりない。
 旧登山口を過ぎ、お助け小屋跡のあたりまで来ると、ようやく山らしい静けさが戻ってきた。しかしよくよくみると藪の奥深く潜りこんでいる人間もいる。クマよけの鈴やラジオ、位置確認のためのサイレン音がところどころで聞こえるから、人間がいるのがわかる。興ざめだし、うるさい。確かに注意深く登山道脇の竹藪をみると、私でも発見できるほど、にょきにょきとタケノコが生えている。これを無視するのは難しい。

山は雨で煙っていた

今年はブナの実が大きい
 事故は下山で起きた。急坂でレインウエアーの裾のゴムが木の根っこに引っ掛かり、身体が空中に放り出された。何が起きたのか自分でもしばらく分からない。1回転して谷側にたたきつけられ、メガネは飛び、左肩とひざを強打。幸いなことに仲間たちはタケノコ採りに夢中で、先頭を歩いていたため誰にも見られなかった。高く空中に放り投げられたので、すわ大事故と大騒ぎになっていたろう。それほど見事に飛んでしまった。歩くのに支障はない。レインパンツの裾は鋭利な刃物で切り裂いたようにパックリと破けていた。左ひざと左腕から出血していたが、幸い痛みはない。レインパンツを長靴の中にたくし込まず、かぶせてはいていたのが原因だ。長靴のなかに裾をたくし込んでいれば事故は起こらなかった。
 空中散歩で気が動転したのか、下山道を間違えて降りてしまい、初めて山に挑戦したM君に「そっちじゃないですよ」と注意されてしまった。いやはや恥ずかしい。おまけに転倒したショックから腹痛まで併発、久しぶりにキジ撃ちするおまけまでついてしまった。
 温泉は雫石温泉「雫石あねっこ」。広くて脱衣場も清潔で、嫌いではない。道の駅の野菜直売所のラインアップも充実。ホウレン草を買い求める人が多いのは、ここの名産だからなのだろうか。

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