No.107
眺望に感動する好天の岩手の山
[高下岳(1322m・岩手県西和賀町――2015年6月7日)]
 岩手県西和賀町(旧沢内村)にある高下岳(1322m)は、和賀岳と同じ登山口だ。途中の高下分岐からそれぞれの峰に分かれていく。和賀岳と聞けば「遠くてしんどい上級者の山」といわれるが、登るとわかるのだが、急坂やハードな個所は意外と少ない登りやすい山だ。秋田側から交通アプローチが不便なので、それも含めて「時間がかかって難儀そう」に思われているのだ。岩手側の人たちはまるで秋田市の人たちの太平山と同じように、一人で気軽に登っている姿が見られる。
 登り口が同じせいか、あるいは相対している和賀の露払いのような位置づけのためか、高下岳も大変そうだが、こちらも登りやすい気持ちのいい山だ。
 最初の1.5キロ、高下分岐までが急坂の連続で、あとは稜線歩きを思わせる歩きやすい山道が続く。その上左手にはずっと巨大な和賀山塊が雪をたたえた威厳ある山容で迎えてくれる。途中、ダテカンバの巨木が3回ほど、登山道で待っている。ぶなとは全く違った威厳と風格を備えた巨樹である。地元の西和賀の人たちは「日本一大きなダテカンバだ」という。
 とにかく眺望のいい山だ。北東北の名峰や秋田県側の山々まで、360度すみずみまで見渡すことができる。眼福ここに極まれり。秋田にはこうした眺望のいい山ってない。でも去年のように曇っていれば、景色は何も見えない。どんよりした霞のかかった大気の中を歩く味気なさだ。

これが有名なダテカンバの巨木

和賀岳をバックに
 それでも登りに4時間かかってしまった。歩きやすい登山道だが、距離が長い。和賀岳と比べても0.5キロほどしか歩く距離は変わらない。
 山頂には地元の人だという2人の人たちがいた。ここでランチ。なにせ真正面に和賀岳の威容をまじかに見ながらの昼食である。まずいわけがない。ランチはいつもコンビニおにぎりだったが、前日、散歩の途中に駅中の売店で炊き込みご飯とおにぎりを買った。たまにはコンビニではない手作りのものを、と買ったのだが、これが正解。コンビニおにぎりとはまるで味が違う。これからはコンビニ以外でおにぎりは買うようにしよう。
 下りもゆうに3時間ほどかかった。合わせて7時間強のコースだ。
 それにしても朝3時半起床はつらい。集合場所を5時に出発しても、けっきょ秋田に帰ってくるのは5時過ぎだから、この起床時間で正解なのだが、「3時半」という非日常な時間帯が前日のストレスと萎縮の原因だ。
 温泉は「沢内バーデン」にある「志賀来温泉およねの湯」。沢内村も今はもう西和賀町になってしまったが施設にだけは旧村名が残っていた。そばに沢内村の名前を全国区にした名村長・深澤晟雄(まさお)の資料館もある。時間があればよりたいところだ。
 朝早かったのは山以外にも理由がある。登山口のあるふもとの町に、有名な「とうふや源助」があり、登る前にここで豆腐や湯葉を事前注文してから登山口に向かうのだ。ここの豆腐というか湯葉は本当にやわらかくて味が濃く、うまい。早く秋田に帰って湯葉をツマミに一杯やりたい。

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