No.129
歴史の詰まった「北の国境」の山
[高岳山(231m・八郎潟町――2016年4月17日)]
 八郎潟町にある標高231メートルの小さな山で、「たかおかやま」と読む。登り始めるとモノの30分もあれば山頂についてしまうから、登山的な面白みはない。なのに毎年ここに登っている。やはり分厚い歴史の詰まった山へのあこがれというか敬意のようなものが、この山に向かわせるモチベーションかもしれない。
 高岳山は森山の北西にあり尾根が続いている。頂上付近には延喜式の式内社である格式の高い副川(そえかわ)神社が祀られている。平安中期には山岳仏教の聖地だったのだ。
 登ってみてもここが聖地になるような雰囲気はどこにもない。急峻な斜面やうっそうとした山奥の雰囲気は、どこにもない。どうして国はこれほどの格式をこの小さな山に与えたのだろうか。
 そんなことを考えながら、登山口から頂上まで一気に急峻な階段の登りを駆け上がった。

副川神社裏の山頂

朝市で売られている残存湖の小魚
 当時は森山、高岳、三倉鼻から北には郡も郷もなかった。いわば日本ではなかったのだ。ここから先は蝦夷たちの支配する国。いわば律令国家の北の果てがこの高岳山だった。山腹にある石灯籠の永久常夜灯は八郎潟を往来する船の灯台の役目を果たしていたという。風情がある。山頂展望台にある一本桜はまだ咲いていなかった。
 山頂に着いたあたりで天気予報通り雨足がひどくなった。急いで下山を開始した。今回は室町時代の末期の三浦氏の居城だった「浦城」には寄らないことにした。
 山に登る前に五城目・朝市を冷やかしてきた。若い人たちの出店が予想以上に多くて驚いた。五城目は都会からの若者のIT移住が活発で、その家族などが出店しているのだそうだ。若者たちのこじゃれたアクセサリー店と、昔ながらに鯉やフナや山菜を売る店のギャップが、なかなか味のある光景だった。
 温泉は「小倉温泉」。泉質はヌルヌルしていいのだが、脱衣場は狭いしシャワーのでは悪い。露天風呂はないし、湯船は小さい。好きではない温泉なのだが、この近くにいい温泉は皆無だ。外観やロビーはシンプルで清潔感もあるのに、肝心のお風呂がその正反対なのだ。

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