No.268
久しぶりの「お山かけ」
[男鹿三山・男鹿市・715m・2022年5月16日]
 久しぶりに男鹿の真山、本山、毛無山の3山縦走。昔から男鹿ではこの3山縦走を「お山かけ」といい、縦走をして初めて一人前の大人として認められたという。縦走には車2台が必要だ。まずは五社堂のある長楽寺登山口に車1台を置き、そこから30分近くかけて真山神社にもどり登り始める。今回は若い新人女性も入れて総勢3名。Sリーダーは新人のため長楽寺に車を置いた後、男鹿水族館のある戸賀湾まで足を延ばし、展望公園に寄り大まかな男鹿半島の成り立ちをガイドしてくれた。実はSリーダー、男鹿ジオパークのボランティアガイドでもある。私自身、何度も男鹿の山には登っているが、半島の親指(にあたる地域)までくることはめったにない。噴火口の後である一ノ目潟や三ノ目潟をじっくり見たのも初めての経験だ。何よりも驚いたのは、目の前の広大な戸賀湾そのものが、噴火でできた火口で、そのあまりに巨大な噴火規模のため海とつながってしまった、という事実は知らなかったこと。なんだかようやくこの男鹿半島の全体像がおぼろげながら像を結んだような印象だ。
 戸賀からは男鹿真山伝承館のある真山神社登山口へ。いつものようにここから登り始め、真山を超え、本山の麓を迂回しながら、毛無山を下って赤紙神社五社堂を経て、長楽寺駐車場に帰ってくるという長いコースだ。真山を超えるとそこからはそこからはひたすら下るだけなのだが、油断をすると、ヒョイと横から登山道へ普通の格好をしたドライバーが顔を出す。自衛隊の舗装道路があるため山頂までお手軽に来ることが可能なのだ。毛無山周辺には環境庁指定の珍しいオオサクラソウが鮮やかな色合いで咲き誇っていた。ちょうど見ごろの時期なのか登山客も少なくない。途中で大きな動物のフンと遭遇。男鹿はクマがいないはずだが、この糞の大きさはどう見てもクマ。やはりいるのだろうか、少し不安な気持ちになる。
 下りはとにかく長い。そこが難関の縦走だが、難関というのは退屈という意味も含まれている。ひたすら緩やかな勾配のブナ林の中を下り続けるだけなのだ。最終的に縦走にようした時間は6時間余。

海の見える山歩きだ

首のないお地蔵さんが3体ほどある
 春の山歩きは楽しい。きれいな花々が咲き乱れ、ブナの若葉の瑞々しい薄緑色に心身とも染まってしまう。この時期になると仲間たちの多くは山歩きよりも山菜に全身全霊をかけているのだが、この男鹿は国定公園だ。巡視員がいつも巡回していて、ビニール袋でも持っていようものならすぐに飛んでくる。山菜採りも自由とはいかない場所だ。先日、山ですれ違った高齢女性に「この山菜、食べられますか?」と唐突に訊かれた。正直に「知りません」とこたえたら、件の女性、グループに戻って「あのトーサン、意地悪で教えてくれないのよ」と大声で言い放った。山菜を採らないのが「変人」のような扱いを受け取られることしばしばだ。わがモモヒキーズには山菜に関してちょっと変わったルールがある。マタギ勘定というものだ。採る人も採らない人も平等に下山後、採った山菜を人数分に分け合うのだ。採らないが食べるのは好き、という私のような人間にとっては実にいいルールだ。

 温泉は秋田市まで戻って「秋田温泉プラザ」。入浴料は高いが(650円)が設備はいいのでリラックスできる。


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