No.301
前岳・ヒメシャガ・山ヒル・山菜採り
[太平山前岳・774m・秋田市――2024年5月11日]
 今日はオフィシャル(?)な金山滝コースで山頂まで。週末なのに登山者はそれほど多くない。GW中も多くなかったから、もう若い人の登山ブームは終わったのかしら。
 下界は25度近くになるとの猛暑予想だが、山のなかはずっと気持ちのいい風が吹いていた。汗だくになることはなく、水もそれほど飲まなかった。山の途中から、突然ヒメシャガ・ロードが始まっていた。日本原産のアヤメの種類だが、白と青紫のコントラストが鮮やかな大ぶりのアヤメだ。たしか前回はこの花に気がつかなかったから、なんだか感慨もひとしおである。
 それにしても不思議なのは、登山者とはほとんど山で会わないのに登山口駐車場はいつも車でいっぱいだ。これは半分以上が山菜採りのひとたちの車なのだそうだ。秋田は山菜採りが好きな県民が多い。なぜ山菜がそんなに好きなのか。山菜に興味ないこちらとしては、ずっと考え続けている「課題」なのだが、どうやら答えは簡単なようだ。「そこに山菜がある」からだ。マロリーの有名な「そこに山があるから」とまったく同じ理屈である。そばにただで手に入る食品がある。採らなければ損という簡単な理屈だ。タケノコのように換金性の高いものはまた別の経済的な理由があるのだろうが、こと山菜に関しては「近くになければ採らない」から、採るのは近くにあるから、と断じざるを得ない。ようするに「近くにあるから」が答えなのである。間違っているかもしれないが、それが私の下した結論だ。近くにあるから採る。クマなんかどうってことはない。食べものがただで手に入るなんて他にある? というわけだ。

この9番地蔵から山頂までが長い

ヒメシャガ。花の写真は難しい
 さらに前岳や中岳を登っていると登山者同士が深刻に話し合っている光景をよく見かける。話は「ヒル」に関してのことが多い。6月から9月あたりまでヒルが最盛期になり被害者も多い。炭酸ガスや振動、温かさを察知して、地面から人間の身体に這いあがってくる吸血虫だ。木から落ちてくるというのは迷信で、私も昔、足に取りつかれ、それを知らないまま温泉に入り、温泉を血に染めてしまった苦い経験がある。痛くないのが厄介だが、乾燥には弱い。ヒルについて少し勉強をしておこうかと思っている矢先、日本農業新聞から小林照幸著『死の貝――日本住血吸虫症との闘い』(新潮文庫)という本の書評依頼があった。グッドタイミングだ。今日はゆっくり山頂まで2時間。下山は慣れたせいか1時間20分ぐらいで降りてこられた。

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