No.315
一昨日に続いてまた前岳だったが……
[太平山前岳・774m・秋田市――2024年9月16日]
 一昨日に続いて今日も前岳。3連休の最後の日だ。オーパスリフト口からの登りで、ここからだと金山滝口よりは1時間早く前岳に着く。だから、あわよくば中岳までと目論んだのだが、一昨日の疲れはとれていなかった。太もものハリが取れず、無理して中岳まで行けたとしても、帰りの足が不安になった。
 こんな時、ひとり登山は「自由」がきくのがいい。下りるもやめるも引き返すも、その時の気分で自分が決められる。朝の出発時刻も自由だ。今日は天気がいいので、まずは布団を干し、朝ごはんも(インスタント牛丼)自分でつくって、コミも出し(月曜なので)、余裕で登山口に向かった。時間にも同行者にも縛られない、この自由さは手放せない。

リフト口は幽玄の森の雰囲気が漂う

女人堂から海がはっきり見えた
 昨夜は、山の前日はなぜか、よく寝られない。『片足で挑む山嶺』(桑村雅治・幻冬舎)という本を読んだのだが、実に消化の悪い本で、版元の幻冬舎の代表的な「やっつけ本」だ。そういえば今日の山でもガッカリがひとつあった。あの富士登山でよく見かける半袖短パンの外国人の中年夫婦が登っていたのだ。アザミもヤマビルもマムシもスズメバチも人種を選ばない。少し痛い目にあって、わかることもある。

 中岳をあきらめて下山してきたのだが、午後から事務所に来客。太平山系の「埋もれた石像」を調査、取材しているSさんだ、先日、上梓したばかりという『太平山系失われた石像」(私家版)を届けてくれたのだ。冊子は、石像調査を長年続けて他界した畠山秀雄氏の遺した膨大な写真をセレクトし、その写真にSさんが解説を施した労作だ。先人たちの積み上げた記録を後世にバトンタッチをしていく仕事は貴重だ。歴史というのは「靴」のようなものだ、と喝破した歴史学者がいたが、この冊子もまぎれもなく、私たちの「靴」のような存在になるに違いない。

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