何という斜度だ、この山は |
[八塩山(713m)本荘市――2014年4月16日] |
珍しい水曜日山行。先月、体調不良で行く予定の山を3座パス、その遅れを取り戻そうとあせっている、というのは冗談だが、突然、仕事場に新入社員(息子です)が入舎した。自分がいないほうが成長する糸口がつかめるかも、という深遠な親心というのは嘘だが、留守番がちゃんといるというのは心強い。これからは普通の曜日でも、実は山行も可能になったのである。 山は本荘市にある八塩山。好きな山だ。なにより眺望がいい。奥羽山脈がすっきりと見わたせる。週末ではないのでモモヒキーズ有志4名だけの山行だ。 登山口まできれいに除雪されていた。ロータリーで削り取られた雪の壁は2mほどもある。温暖な本荘とは言っても海から離れていると、まだこれほどの雪があるのが驚きだった。 いつもと違うコースに挑戦しようと雪の壁の彼方にある「前平コース」を選択した。登山口は雪に埋まっていて登山道もまったく見えない。これをやみくもに山頂の神社まで直登してみよう、というのだ。 登りはじめると山頂らしきものが空の上にチラチラ。あそこまで行きつけばいいんだ、と侮っていた。なのに行けども行けども、山頂は遠くなるばかり。斜度もどんどんきつくなる。これだけきつい斜面はこれまでの山行でも記憶にない。30度以上ある斜面が延々と続いた。雪も半ば腐れ雪で、いたるところでスパイク長靴がズボズボ。ワカンを持ってこなかったのが悔やまれる。でもこの斜度だとワカンも役に立たなかったかもしれない。 先頭のSシェフだけはラッセル担当なのでワカンをはいていた。そのSシェフも大きく息を吐いて、珍しく何度か難儀そうな表情を見せた。 登ること1時間半。そのほとんどが急斜面の連続だったが、いきなり空が見えた。と思ったら山頂の小屋の真上にぴょこんと、出た。長かった。ちょうどこの距離と労力を2倍すれば鳥海山祓川直登コースと同じくらいかも。 来月予定しているコースなので、いいトレーニングにはなった。 山頂のブナの林がきれいだ。このブナ林が好きだ。
下山は30分ほど。あっという間に朴の木沢牧場登山口に到着。ここから前平登山口まで10分ほど雪のトンネルを歩いて、雪の壁に埋まった車の場所まで戻った。 * 温泉は道の駅東由利の「黄桜温泉 湯楽里」。ここの温泉は県内日帰り温泉でもベストスリーに入る好きな温泉だ。泉質や温度、効能といったものにはさして興味はないのだが、やはり外観や調度、居心地の良さが問題になる。浴室は広々として色も黒と茶を基調にして落ち着いて上品。お湯は熱くもぬるくもなく、ジャグジーと大浴場の2つっきりのシンプルさ。露天風呂がないのが残念だが、余計な調度やゴテゴテした色がまったくないのが憎い。脱衣場の広さ、落ち着いた調度類、も心和む。 そんな雰囲気になじみすぎたのか、それとも八塩山の急斜面に心身とも疲労していたのか、洗面道具一式を脱衣所に忘れてきてしまった。いやいや恥ずかしい(翌日、本荘で偶然にも仕事があったので、その帰りに忘れ物をとってきた)。 |