Vol.1244 2024年11月1日 週刊あんばい一本勝負 No.1236

ノンアル・断捨離・「拙者の散歩道」

10月26日 久しぶりの前岳。金山滝からだが駐車場は3台ほどしか車がない。いつものようにマイペースで、登り2時間、下り1時間半。これが自分の身の丈に合った理想的なペース配分かもしれない。下りはそれでも結構足にきた。20度前後の秋の山は寒くも暑くもないので、水もそう飲まない。前に登ってからだいぶ時間がたっているので、いやになったら途中で引き返してもいいような気持ちで出かけたのだが、やっぱり登りだすと、気分は修行だ。最後まで行きたくなってしまう。腰痛に悩まされてきたが、それも問題はなし。大きなミスはカメラがうまく作動しなかったこと。「接写」でカメラを酷使しているので、その弊害が出たのかもしれない。

10月27日 山登りの翌朝は「気分のいい目覚め」だ。どこにも筋肉痛や違和感がない。その一方で下山直後は、もうしばらく山はいいや、という気になる。寝て起きると、また登りたくなっている自分がいるのだが、何度経験してもよくわからない山の魅力だ。今日は日曜だが、複数人の来客予定が入っている。その準備もあり、少し早めに起きていろいろ動き回っている。このところ少しずつだが、体重が落ちつつある。晩酌をノンアルコールにしているせいだろうか。

10月28日 今日書くことは数日前から決めていたが、選挙の話題や歯痛などもあり、うまく書く自信がなくなった。ざわつく気持ちをしばらくクールダウンし、頭を整理してから、改めて書くことにしよう。というわけで、10月最後の週の月曜日。昨日は日曜日なのにいろいろあってバタバタ。その流れのまま月末は週末までバタバタしそうだ。

10月29日 読む本がなくなってピンチだったのだが、小林聡美「わたしの、本のある日々」(毎日文庫)に救われた。テレビ番組「団地のふたり」の小泉今日子との共演で「すごい女優だなあ」と小林聡美にがぜん興味が募っていた。映画の「かもめ食堂」や「めがね」なども昔から好きではあったのだが、まさかの本で感動させられるとは思わなかった。「読書家ではない。読むのに時間がかかるし、本屋にもたまにしかいかない。できれば文字は大きくて厚くない本が好ましい」と本人は言う。いやいやその選書の優れたセンスをみれば、謙遜だとばれてしまう。「港の人」「ミシマ社」「ナナロク社」「弦書房」「左右社」といったメジャーではない版元の本が多いのを見ても、それはわかる。ネコと遊び、山に登り、ご飯を作り、俳句に夢中、そして本。かっこいいなあ。ただ1カ所、亡くなった佐野洋子さんと知り合った頃の私信を「あとがき」に載せている谷川俊太郎の本に「ちょっと複雑な気持ちだ」と、批判的に感想を述べているのが印象的だ。この本を読んだおかげで、これから読む本を10冊以上リストアップすることができた。

10月30日 事務所の床に数匹、米粒2つくらいの大きさのイモムシがうごめいていた。仕事場に生きた虫が現れたのは初めてだ。昼飯をここで調理して食べているから、その食材から害虫が湧き出してきたのだろうか。でも食材は冷蔵庫の中だ。しばらく考えて思い至った。部屋の片隅にもう1週間放置してあった「里芋」があったのだ。こいつが犯人だ。すぐに里芋は処分したが、仕事場で野菜の害虫と遭遇するとは思いもしなかった。

10月31日 今日で10月も終わり。パソコンが8年ぶりに新しくなったり、「拙者の散歩道」なる写真撮影に没頭、服と本の断捨離までやってしまった。最も大きいのは、この1か月間、ほぼノンアルで過ごしたことだ。もともと晩酌に一杯の焼酎かハイボール、ワインを飲む程度だ。それがノンアルビールで十分満足できるようになったのだから不思議だ。もちろん無理してノンアルを飲んでいるわけではなく、アルコール類を飲むのが面倒くさくなったのが原因だ。

11月1日 散歩途中、ガソリンスタンドに「あたらしい新車えらび」というコピーのノボリバタが何本もはためいていた。「馬から落馬」の類のコピーだなと思ったが、一流の上場企業・石油販売会社がそんなミスをするわけがない。要するにガソリンスタンドが始めた「新車リース」の宣伝コピーなのだ。うちの車(フィット)も最初は新車リースだった。その後買い取り、もう10年以上乗っている。走行距離は20万キロだ。来年車検があるので、それを機に買い替えるつもりだが、本音を言えば、もう車はいいよね、という気持ちだ。若い人もいるので、そうもいかないのだが、新車リースか中古車か、迷いどころが多い。昔は最後は電気自動車と固く思っていたのだが、最近やけに電気自動車の評判が悪い。選択肢の中から消えてしまいそうなのが残念だが、まあこれも時代だ。  
(あ)

No.1236

なれのはて
(講談社)
加藤シゲアキ
 ミステリー仕掛けのエンタメ小説とは言っても、440ページの本を読み通すのは一仕事だ。舞台は秋田市土崎。秋田の風土や文化、方言が重要な役割を果たす物語である。仕事柄、読まないわけにはいかない。メインテーマは「油田」で、これをめぐる大正から昭和にかけての一枚の絵の謎を追う物語だ。油田に関しては知らないことが多く、よく調べて書いたものと感心した。どうやら著者の祖母が秋田の人らしく、本人大阪出身でジャニーズ系タレントだ。物語の肝になる秋田に関する記述の数々に、「え……?」という箇所が数えきれないほどある。この本が仮に文庫になったり大きな賞を取ったりすると、やはりこのあたりは大きな瑕疵になる恐れはある。たとえば秋田マタギが登場するのはいいのだが「鹿や猪は身近な存在」と書いている(どちらも当時の秋田には生息していない動物だ)。方言の遣い方にも、かなり無理がある。昭和初期に「秋田の米はうまいと評判」というのも事実誤認だ。編集者も若くて、このへんの細部まではノーチェックだったのだろうし、エンタメ小説だから目くじらを立てなくても、と思うが、活字の世界はそう甘くはない。あまり売れなかったから問題は隠れたままだが、これが大きな賞でも取れば読者層は一挙に広がる。そうなると問題点を指摘する声も必然的に大きくなる。

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