No33
週末連続登山で、体力は大丈夫か、ジブン
[八塩山(本荘市・715m)――2013年6月8日(土)]
[真昼岳(美郷町・1059m――2013年6月9日(日)]
 好天というほどではないが、雨がないというだけで週末はウキウキ気分だ。今日は仕事をする予定の土曜日だったが予定変更、友人と2人で本荘の八塩山へハイキング。朝9時出発、ハイキングシューズに軽装備でのんびりダラダラ、まるで緊張感のない山行というのも、たまにはいい。そういえば1時間内外で登れる低山が秋田市近郊にはけっこうある。明日は県南の真昼岳登山の予定なので、2日連続で無理はできない年齢だが低山なら連チャンでも問題ない。これから花のきれいな時期は、週末連続山行、というケースも多くなるのかも。低山に行くと最近は決まって山ガールとおぼしき娘たちと出会う。いいことだ
 こちらは不粋な男2人。天気もまあまあ、登山道もきれいで、本荘市民人気のハイキングコース。登り1時間10分、下り50分。朝9時秋田市出発でも十分時間に余裕のある山歩きだ。
 温泉は東由利の道の駅にある黄桜温泉「遊楽里」。ここの温泉は県内でも1,2を競う広さと清潔さを誇る温泉。無色透明の湯で、採光もいい。この頃は外からの光がたっぷり注がれた明るい温泉が好き。秘湯系の暗くて薄汚い温泉はNGだ。これで露天風呂があれば言うところなしなのだが。
 湯に入って心地よい疲労感で家に帰り、早速明日の準備にかかった。ここで異臭に気がついた。温泉で着替えたポロシャツから強烈なカメムシ臭がするのだ。あれッ、どこでカメと遭遇したんだろう。そういえば去年はカメムシでえらい目にあった。網戸のない窓から大量発生したカメムシが入り込み、家の中は数ヶ月間臭いが消えず閉口した。カメを探し出せぬまま冬口になり、暖房をつけたとたん、電燈の中からカメ2匹が飛び出した。あの時の忌まわしい記憶が蘇った。
 カメムシ臭で、せっかくの心地よい疲労感も吹っ飛んで、暗い気持ちになったが、どうやら服にだけついた臭いのようで脱いだら異臭は消えた。
 自然と遊ぶのは楽しいが常にカメムシと山ヒルの怖さも付いてくる。熊と遭遇のリスクも高い。事故やけがとも表裏の関係だ。そのことを肝に銘じなければ。

八塩山のブナ林

八塩山山頂で
 予報は好天のはずだったが曇天。今にも降りだしそうな雲行きだが、雨はなさそうだ。今日は美郷町にある真昼岳。秋田で一番ブナ林の美しい森があり、好きな山のひとつだ。毎年、飽きもせず県内の近場にある同じ山へ何度も登る。真昼も毎年欠かさず登っている好きな山だ。いい加減飽きるが利点もある。去年や以前の自分の脚力や登山技術と比較することができるからだ。
 ここ2年ほど真昼岳と聞くだけで「しんどそうだな」という気持ちが先行したが、今年は「楽勝だ」とうそぶいている自分がいる。ダイエットの影響だろうが、ここ10年間のなかでも今年は一番体調、体力が充実している。まあ、こうした慢心から怪我や事故を起こすのが常だから慎重にはなっているのだが……。でも、身体の調子がいいって、何にもまして幸せなことだ、と心底思う今日この頃である。
 赤倉口からの登りだが川筋のごつごつした岩がむき出しの歩きにくい登山道を30分ほど歩かなければならない。ここを超えれば、この山のハイライト、若々しいブナ林の連続だ。曇天だが山中はもやって木々も道も濡れそぼっている。雨が降っていないのに森はしっとりと濡れている。これもまた風情がある。ブナ林はまるで早朝の森のように真っ白にけむり、幻想的な幽玄の世界に迷い込んだ気分になる。今回の大きな目的はこの山でしかめったに見られない「オサバグサ」を見ること。まだ早いのでは、という危惧もあったが、9合目付近から一挙にオサバグサロードに登山道は変身、みんなを喜ばせてくれた。オサバグサはケシ科の多年草で、機織機械に使う筬(おさ)に葉の形が似ているところから名づけられたのだそうだ。なるほどシダのような葉っぱだ。登りは2時間40分。下り2時間15分。下りに時間がとられたのは、山菜採りに寄り道するため。この日もタケノコ、アイコ、蕨にニオサクと、みんな夢中だ。
 山菜のおいしさに去年目覚めた。それでも自分で採って料理する、というところまでにはなれない。面倒くさいこともあるが、放射能のことも脳裏に引っ掛かる。神経質すぎるといわれるかもしれないが、害があるかもしれないものを、わざわざ自分から進んで食べる勇気はない。放射能といえば誰もが3・11を連想するだろうが、秋田の山々は、それ以前から中国の核実験の影響を強く受ける可能性の高い地形にあるのだ。
 今回の真昼岳でもまたまた犬連れ夫婦に出会った。が、今回は何も言わなかった。めんどうくさいからだ。最近、山ガールとともに増えたのが、この犬連れ登山だ。モモヒキーズの登山仲間には獣医さんもいる。彼に訊くと「山に犬は、よくない」の一言。禁止されていようがいまいが路上で立ち小便がよくないのと同じ理屈だ。犬連れには自分は立ち小便をしている、という羞恥心がかけらもないから始末が悪い。
 下山途中、集団の登山者2組と出会った。ひと組は千畑町の「山開き登山」の方たちで、リーダーはわが「山の学校」会員Mさんだった。もうひと組は山形からマイクロバスでやって来た団体で、方言からすぐ山形の人と分かった。東北各県の人たちの本を出しているので、東北の方言の際に関しては、他の人よりちょっぴり敏感だ。って何を自慢しているんだジブン。
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 下山後は美郷町にある郷土資料館へ。ここの「わら細工館」を一度見たかった。わら細工は農作業の機械化とともに消えていくのだが、日本固有の文化といっても過言でない「手仕事の原点」だ。この確実に消えて、なくなってしまう文化をしっかり目に焼き付けておきたかった。それにしてもまあ昔の人たちはほとんどすべての生活道具をわらで作ってきたことに唖然とする。圧巻は女性の生理帯だ。これまでわらで作っていたのだ。モモヒキーズの女性陣も、その展示を前にして、「これどうやって使うのかしら?」とひとしきり首をひねっていた。
 温泉は仙北市の史跡の里交流プラザ柵の湯。ここも広くて清潔で好きな温泉だ。露天風呂もある。そういえばこの温泉の後ろには「餅の博物館」がある。これも見ごたえのある資料館だ。県南はこうした小さなユニークな博物館が中央や県北よりも充実している。これでどこかに「馬の博物館」があれば文句なしなのになあ。近代の秋田や東北の農村の暮らしに馬が果たした役割の大きさというのは、すさまじいものだ。そのことを次世代の人たちにいま伝えておかなければならない。

オサバグサ。葉の形に注目

真昼岳山頂にて

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●No. 1 草紅葉の海で、なぜかパエリア
●No. 2 贅沢お昼と、お気に入り温泉
●No. 3 白神のブナの森を彷徨う
●No. 4 南八幡平の自然休養林を歩く
●No .5 巨木の森で、雨に追われて
●No. 6 何が悲しくて、遠い県境の雨の山へ(+クマの話)
●No. 7 「キジ撃ち」慣れ、増える体重、初めての山
●No. 8 雹に雷とスパイク長くつ、是山の山
●No .9 賞味期限切れ食品がうまい、きれいな三角山
●No.10 生きものたちと出あい、ラーメンうまい雪の山
●No.11 はじめての朝市、風格の天然杉、泥土のババ落とし
●No.12 雪と風とツェルトとストック
●No.13 「靴納め」はダブル山行、かててくわえて忘年会
●No.14 これが今年最後の山行です、信じてください!
●No.15 桜のつぼみが大きいから、春は早い……
●No.16 彷徨っても漂っても、頂上は遠い
●No.17 動物の足跡がないのは、「なまはげ」がいるからだ
●No.18 どんな山でも、なにか新しいことを学べるもんだ
●No.19 「山があるんで、お先に」って言ってしまった夜
●No.20 大滝を見にスノーハイク、帰りは古民家見学
●No.21 冬は近場にこそ遊び場がある+ついにシュールストロミング開缶!
●No.22 山頂で野点、そうか今日は「桃の節句」か
●No.23 青空、中岳、ひとりぽっち
●No.24 石仏に村人はどんな思いを託したのだろうか
●No.25 冬限定、地図に名前のない山に登る
●No.26 登山道のないやぶ山で、昆虫になる
●No.27 ダブル登山で、県北の春山に酔う
●No.28 GWは雪の回廊を抜け、強風の山頂に立つのが夢
●No.29 街から7キロ先に、千メートル級の山があるの?
●No.30 下水掃除と宮沢賢治とアイゼン登山
●No.31 青空・無風・トラブルなし。雑魚10匹より大物1匹
●No.32 みんな嫌がるけど、オレは好きだヨ、東山

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