知っていそうで、知らなかった駒ヶ岳 |
[秋田駒ヶ岳・女岳(1512m・田沢湖町――2013年9月22日)] |
8日の鳥海山は雷雨で中止、15日の山伏岳は友人の葬儀で参加できなかった。3週間ぶりの山歩きだ。緊張する。ワクワクする。ドキドキする。予定外の中止のほかにもここ数週間、身辺が目まぐるしく変化し、とまどうことばかりだった。長く勤めてくれた女性社員が退社し、その補充をしないことに決めた。ということは彼女が担当していた編集事務、とくに経理と受注管理の仕事を、私が引き継ぐことになった。もう一人、嘱託の男性社員もいるのだが、彼は高齢で近々退職が決まっている。ということは私一人で10月からは会社を切り盛りしていかなければならないのだ。文字通り「ひとり出版社」である。もちろん何人かのパートやアルバイトの人たちを使いながらだが、給料を払う社員はいなくなる。理想的な姿でもあり、不安の多い旅立ちになりそうな予感もある。そんなわけで、この2カ月間、実は毎日机の前に垂れこめてデスクワークの日々なのである。PCの中の数字と格闘しながら、これまで味わったことのないストレスの海を漂っている。 こんな時こそ、山にでも行って森の清涼な空気を存分に吸い、リフレッシュしたい。なのに、2週連続、お預けをくらってしまったというわけである。 * 前日まで台風や連夜の雨続きで、お天気への不安は午前中いっぱい消えなかったが予報通り天気は回復、絶好の山歩き日和になった。 今日の山は秋田駒ヶ岳だ。秋田側から登れば8合目までバスで運ばれ、あとはハイキングコースを1時間も歩けば頂上だ。これではわざわざ行く気がしない。そこで今回は、岩手県側の国見温泉コースを歩くことになった。これは初めてのコース。駐車場は県外ナンバーの車でいっぱいだ。そりゃそうだ、秋田じゃないんだもん、ここは。秋田駒ヶ岳というのが正式名称だから「秋田の山」という先入観念がこびりついているが、反対側はもう岩手県なのだ。 国見温泉からスタートし、しばらくゆるやかな山歩きが続く。1時間も歩くと横長根分岐に到着する。ここからぐるりと外輪を時計回りに1周しようという計画だ。 日曜日のせいか登山客は多い(観光化された秋田側ほどではないが)。われわれモモヒキーズは次々と若者たちに追い抜かれていく。ゆっくり、のんびり、花や景色を楽しみながら、ダラダラおしゃべり登山が、モモヒキーズの「持ち味」だ。 多くの登山者は横長根分岐から右に折れる。歩きやすいコースだからだ。私たちはあまのじゃくなので左に折れた。姿見ノ池を右手に見ながら御坪分岐を通り、金十郎長根を歩いて、五百羅漢から男岳を回って横長根分岐まで戻ってくる、あえて難しいコースをえらんだのだ。五百羅漢が見えたあたりで、男岳より登山客の少ない女岳の山頂に行ってみよう、と急きょ予定変更。これもモモヒキーズのいつものパターンだ。 溶岩後の黒い砂礫に足をとられながら女岳から駒池のあるムーミン谷に下り、ランチタイム。池にはオタマジャクシとサンショウウオが仲良く同居していた。 ランチ終了後、右手に小岳をみながら大焼砂分岐まで下り、横長根分岐まで到着し、無事1周。約7時間の周遊だった。
今回はメモ帳持参で、豊富な花の名前を忘れないようチェックしてきた。登り始めは赤い実をつけたツルリンドウヤヒメアオキ、ツルアリドウシやゴゼンタチバナが目白押しで、こうも赤い実ばかりだと、もう区別がつかなくなった。後半は一挙に白い花が多くなる。ウメバチソウにシロタマ。黒ダイヤのようなツクバネソウや黄色のアキノキリンソウも印象深い。が、とても覚えきれない。紫色の花、タテヤマリンドウには多くの人から歓声が上がったが、そうか、そんなに珍しいは何なのか。 花音痴ではあるが、驚いたのはブナの実が大きかったこと。今年はブナの実が大豊作のようなのだ。クマはうれしいだろうな。これでせっせと子作りに励める。 * 下山後の温泉は角館まで戻って、花葉館へ。ここも明るくて清潔で好きな温泉だ。3週間ぶりの汗をここですっかり流した。やっぱり山はいいなあ。 |