この山には、もう来られないかもしれない |
[大仏岳・1166m(仙北市西木――2013年20日)] |
あいにくの雨だが、先週の駒ヶ岳、栗駒山と2回連続で山行が中止になっている。少々の雨なら決行、というのがみんなの本音だ。雰囲気として「登りたい」というヒシヒシとした渇望感が伝わってくる。 私自身にも少々の雨なら、という強い気持ちがあった。渇望感ではない。この時期に、さしたる意味もないこの山をチョイスしたのは実は私自身に原因があるからだ。前にも書いたがヤマケイから出ている『秋田県の山』という本には県内57座の山がガイドされている。そのうち県北のある真瀬岳を除けば、この大仏岳に登れば全山踏破を達成したことになるのだ。私にとっていわばリーチの山だ。その辺を慮ってSシェフが私用に設定してくれた山なのだ。雨だからいや、とはとても言えない。残っている真瀬岳は藪だらけでまともな登山道はない山らしい。一人ではとても登れない山なので、登る山としての認知は著しく低いから、登っても登らなくても大きな問題ではない、という人もいるほどだ。それにしても大仏岳は太平山系では3番目に高い山。昭和50年ころにようやく登山道が作られた山だ。 ま、そんなわけで見どころのない地味な山へのチェレンジと相成ったわけだが、この山にはもう一つ重大な欠陥がある。登山道まで1時間以上、田沢スーパー林道なるすばらしい名前の付いた「悪路」を歩かねければならないのだ。車は入れない。これがつらい。登る人が少ないはずだ。 案の定、林道の入り口で大きな石がゴロゴロしていた。盛大に車の腹がこすれまくる。車の所有者はたまったもんじゃない。大きく崩落している道路もあった。なるほど、これでは登山どころではない。 雨の悪路をトボトボと歩くこと1時間10分、ようやく登山口にたどり着く。ここでもう疲れてしまった。山も荒れている。人の手が入っていないからだ。 緩やかなアップダウンをくりかえしているうちに牛首の分岐に到着。実はここからがこの山のだいご味だ。山頂までの残りの1時間40分、徹底的なのぼりが続くのだ。これは結構きつかった。
* 温泉は西木にある「クリオン」。ここには10日後も種苗交換会の仕事でお邪魔する予定だ。広々としたゆったりした温泉で好きなのだが脱衣場で風呂道具一式を忘れてきたことに気が付いた。どうしたんだろう。前の山の後の温泉で使用したまま車に入れてきたはずだ。その証拠にバスタオルはちゃんとある。いや、2週間前の馬場目岳の温泉(ザブーン)では確かにあった。ということはあの温泉で忘れてきたことに2週間以上気がつかずに過ごしたということか。風呂道具を温泉に忘れてくることはこれまでも何度かあった。すぐに電話をして送り返してもらっていた。それが今回は忘れたこと自体を忘れていた。このショックは大きい。わが近未来をいやがうえでも想像してしまう。このダメージの大きさに、すっかり山のことは忘却の彼方にすっとんでしまった。 |